企業名 | 株式会社佐伯物産 代表取締役 佐伯大地 様 |
賃貸不動産を通じて「住まう」に寄り添うメディア『YORISOU EHIME』が、愛媛県の賃貸不動産管理会社の皆様に賃貸不動産管理の面白さや楽しさ、地域への想いをお聞きします。
今回は愛媛県東温市で「地域No.1ブランド」を目指してお客様のご相談に幅広く対応する株式会社佐伯物産の佐伯社長に、日頃大切にしている仕事への考え方について伺いました。
銀行員・経理職・新店舗の出店など20代で様々な業務を経験
―佐伯さんのご経歴を教えてください。
私は地元の重信町(現在の東温市)で生まれ、高校を卒業した後に兵庫県の大学へ進学し、大阪で銀行に就職しました。高校・大学とテニスに打ち込んできましたので、就職後も実業団で続けるつもりでしたが、私が入社した年はちょうどバブル崩壊の直後でした。
そのお陰で、実業団には所属していたものの、普通の銀行員としての採用になり、日々業務に打ち込む必要があったため、独学で簿記や宅建の資格を取るなどしてスキルアップに努めました。
―もともと銀行員からキャリアをスタートしたのですね。地元の東温市に戻ったきっかけは何でしたか。
ある日、仕事を終えた後の職場で上司や同僚とテレビを観ていたら、私たちの働く銀行が経営破綻したというニュースが流れました。バブル崩壊、金融不安で銀行が破綻する時代ではありましたが、まさか自分の勤め先が破綻するとは、とただ驚くばかりでした。
この先、どうしようかと考えていた頃、父から地元にアウトレットモールができるという話を聞きました。そこで経理担当者を募集していると知り、銀行での経験が活かせると考えて27歳の頃にアウトレットモールの管理会社に転職しました。
―ニュースで経営破綻を知ったのはショッキングな出来事でしたね。転職後はどんな業務を経験したのでしょうか。
最初は経理部門で働いていましたが、しばらくすると営業部門へ異動になり、飲食フランチャイズの出店担当者として仕事をするようになりました。毎日とても忙しく、休みもほとんど取れない仕事でしたが、20代で出店から店舗の運営まで一切の仕事を任せてもらえたことで非常に多くのことを学ばせてもらったと思っています。
ただ、2年ほど走り抜けた後にふと「こんなに忙しいのなら自分で事業をした方がいいかもしれない」と考え、実家に戻り家業を継ぐ決心をしました。
未経験で挑戦した不動産業。ノウハウを習得するためフランチャイズ加盟を決断
―お父様が創業した会社を継ぐことに不安はありませんでしたか。
そのころの佐伯物産はいわゆる「田舎の不動産屋さん」でした。不動産の仕事に対して、父は常々私に勘と経験が大事、と言っていました。しかし、私は不動産業界が未経験で地元にもいなかった為、父と同じ方法は実践できません。
しっかり基礎知識を学び、地域のお客様から何か相談があったときにはきちんと助言できるようになるためには、情報の少ない地方において独学では時間がかかりすぎると考え、LIXIL不動産ショップに加盟しました。
―未経験から不動産の世界へ足を踏み入れ、フランチャイズ加盟を通して知識をつけていったのですね。現在はどのような事業を展開していますか。
愛媛県東温市は人口約3万人、1万5千世帯ほどの小さな市です。不動産の売買専門、賃貸専門だけで事業をしていると市場が小さく、会社としての成長も限られてしまいます。ですから、当社は「困っているお客様の相談を何でも聞くよろず相談所」を目指し、気軽にお越しいただける環境づくりを行っていきました。
現在、東温市のシェアは賃貸売買とも東温市に本社のある不動産会社の中では№1になりました。私が家業を継いだのは2002年ですが、そこから約22年でここまで成長させることができたのは多くのお客様の相談事をお聞きしたことと共に、フランチャイズ加盟により情報を整理し、仕組化することが出来たからだと考えています。
―地域に近い存在だからこそ、どんな相談も受け止めることが求められているんですね。事業が安定するまでには多くの苦労があったのではと思います。
現在、当社の管理物件は1,200戸ほどですが、300戸を超えるまでは小さな用事の積み重ねで多くの時間がかかり苦労しました。特にIT化がまったく進んでいなかった2010年頃までは、手作業が非常に多かったですね。保険の更新ひとつにしても、自分で書類を持参して手続きをする必要がありました。
最も苦労したのは夜間の対応です。当時は店の電話を携帯電話に転送していましたが、私一人ですべて対応していたので、いつ電話が鳴るのか緊張しっぱなしでストレスが溜まりました。また、知識もないためお客様が「水漏れしている」とおっしゃられてもどうすればいいのかわからず、止水栓を閉めるくらいしか対処できません。
ただし、様々なトラブルに諦めずに立ち向かいながら経験を積めたことは後々の成長の力になったと思っています。
「私の資産はあなたに任せる」お客様から求められる幸せ
―日々お客様と接する中で喜びを感じた出来事について教えてください。
最初の頃は、とにかくがむしゃらにお願いして色々な仕事をさせていただきました。来店なんて失礼な、こちらから行きます!みたいな感じです(笑)
しかし解決した件数が増えてくるにつれて、お客様から「相談があるんだけど」と声をかけてくださる機会が増えてきました。誠心誠意ご提案して「すべてあなたに任せるから頼むよ」と言っていただいたり、ちょっと店にいっていいか、とご来店いただくお客様が増えたのは本当にありがたいことです。お客様が佐伯物産という会社を信用してお声がけくださっているんだと実感する瞬間です。
―現役で活躍なさっている佐伯社長ですが、今後の事業承継について何かお考えはありますか。
私の息子は大学生で、大学を推薦入試で受験したときの志望動機に「父の仕事を継ぎたい」と書いていました。私は夜中まで仕事をするのも日常茶飯事なのですが、息子も「家だと集中できないから」と横で一緒に受験勉強していたんです。本人は将来のことなど何も言いませんし、私自身もまだ事業承継を具体的に考えているわけではありません。しかし、ふとしたときに息子が「父の後を継ぎたいから経営学部で学びたい」と考えていることを知り、私の仕事は我が子が働きたいと思えるものなんだと分かったのは非常に嬉しかったですね。
―父の背中を見て、息子さんもきっと何か感じるものがあったのでしょうね。
自分が頑張っているから今の生活がある、ということを少しでも理解してもらっていると嬉しいところです。私の父は大手企業の役員だったため、いつも忙しく、年に数回しか顔を見ませんでしたので小さい頃はあまり理解していませんでした。今の私も中々休みが取れない仕事をしていますが、隙間時間を利用して、子どもたちの行事は少しの時間でも参加して親の仕事ぶりを少しでも感じてもらいたいと思っています。
当社は、東温市で10社ほどある不動産会社のうち最後発で開業した会社です。最後発から成長していくには、第一に、人よりも多く働かなければいけないと考えました。単に人を雇用する資金がなかっただけですが、今でも人の2倍働いて人件費1人分は自分でまかなうスタイルを貫いています。また、最近はIT化によって仕事効率が上がって随分助かっています。
このような仕事スタイルですが、今まで心身とも特に問題がないので、親にもらった頑丈な体には感謝しています。
不動産はお客様の人生そのもの!総合的にコンサルティングする視点は欠かせない
―これから不動産業界に挑戦する方に向けて、メッセージがあればお願いします。
当社は単なる不動産業に留まらず、お客様の資産をお預かりする総合コンサルティング業を目指していこうと考えております。衣食住の中でも、「住」は多くの人にとって生活の基盤であり、なくてはならないものであるからです。
その為には、宅建士や賃貸不動産経営管理士・不動産コンサルティングマスターの資格をそれぞれ単独でとらえるのではなく、総合的な知識として持ったうえでお客様のご相談に応じたいといつも考えています。これから不動産業界に入る方にも、ぜひその視点は持っていただきたいと思います。お客様のお困りごとをしっかりと聞き、うまく解決していくためにアドバイスをする仕事は時間はかかりますが大変やりがいがありますよ。
大きな金額が動く不動産取引には、大きな責任が伴います。お客様が納得・満足したうえで取引を成功させるためには、日々の努力による知識習得と課題解決力が欠かせません。これからもお客様の不動産取引を成功に導くパートナーとして、そして地域の不動産業のリーディングカンパニーとして、精度の高い提案ができる佐伯物産であり続けれるように努力していきます。
―不動産だけでなく「お客様の資産を預かる存在」として幅広く活動される様子が伝わってきました。それこそが佐伯物産の魅力であり、地域トップクラスを維持する秘訣なのだと感じます。本日は貴重なお話をありがとうございました。
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