【対談】公益社団法人愛媛県宅地建物取引業協会会長×一般社団法人全国賃貸不動産管理業協会愛媛県支部支部長 「私たちに求められるもの」とは

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団体名公益社団法人愛媛県宅地建物取引業協会
会長 姉川 誠 様

賃貸不動産を通じて「住まう」に寄り添うメディア『YORISOU EHIME』が、愛媛県の賃貸不動産管理会社の皆様に賃貸不動産管理の面白さや楽しさ、地域への想いをお聞きする企画「Member Episode」。

今回は公益社団法人愛媛県宅地建物取引業協会会長として二期目を迎えた姉川会長に、全宅管理・宅建協会に求められるものは何か。私たちに求められるものとは何なのか。全宅管理愛媛県支部佐伯支部長がお話をお伺いしました。

賃貸不動産管理業の現状について

現在の愛媛県内の賃貸管理業界の動向についてはどうお感じになっていますか。

これは賃貸管理業界だけに言えることではなく、不動産業界にも言えることだと思うのですが人材不足の状況にあって、人材確保とあわせて人材定着が大きな課題となっているように感じます。労働環境の改善、人材育成が業界全体に求められているように思います。社員満足を上げるためには会社としての収入を増やしていく必要がありますよね。

全国的にも問題になっている人口減少や空き家の増加は賃貸管理にどのような影響を与えるるでしょうか。

全宅連をはじめ、愛媛県宅建協会でも空き家対策に取り組んでいるところですが、空き家の問題は、家や土地だけでなく賃貸にアパート、マンションの空き室についても問題になってきていますよね。新しいアパートやマンションが建つとどうしても古い物件を中心に空き室は増えていきます。入居率が低下すれば賃料の低下に繋がり、収入が下がってしまう。そうなるとオーナーさんからはコストの削減を求められることになります。

費用に見合った実績を残して、価値あるサービスを提供できるように私たち自身が成長していく必要がありますね。地域の特性を熟知している私たちだからこそできることがあるように思います。地元業者が賃貸管理に対して足りないところはどういう部分になりますか。

そうですね。冒頭にも申し上げましたがやはり人材育成ではないでしょうか。どうしてもクレーム産業になってしまう部分もありますから社員が定着しない。人材が少ないから退去清算まで手が回らないとか働いている社員が抱えている問題を解決していくと社員満足があがって、それがお客様満足にも繋がっていくように思います。

カスハラは近年社会問題にもなっています。お客様の言動や要求をどこまで受け入れるのかは各企業の基準によります。サービスの不備などに対する正当な苦情もありますが、それが過度であるかどうかの線引きは各企業がしなければなりません。業界団体として取り組むべき問題のひとつになってきています。

全宅保証では本年度「カスタマーハラスメントへの対応に関する方針」を策定してホームページにも掲載しています。不動産業の2割強が、カスハラ経験があるといったデータもありますから、どういう対策をしていけばいいかという情報提供であったり、こういう事例があったという情報を研修等を通じて会員間で共有していくことも必要ではないでしょうか。従業員を守るためにも必要な対策ですし、やはり会社から大切にされていると社員が感じていなければ、お客様を大切にすることはできませんよね。

-全宅管理においても、カスハラ対策に力を入れて取り組むべき問題であると思っています。従業員向けのカスハラ対応マニュアルや実践的なスキルを身につけさせることも重要ですが、費用が発生する場合もあります。そういった場合はオーナー様に理解をしてもらって捻出すべきだと思います。管理料をなぜ払わないといけないのかといった考えがまだ愛媛県内には少なからずあるように感じます。協会がアナウンスすることでオーナー様への周知ができることもあるように思います。

そうですね。「管理」という概念がない時代もありましたよね。入居後の建物に関する管理、入居者、オーナー対応は無償が当たり前、みたいな。開業した当初、私も東京都宅建がその当時作成していた管理業とはどういうものかが書かれたパンフレットがありましたからそれを見せて説明していた頃がありました。督促するにも人が動くのですから当然費用が発生します。地元不動産業者が最初に理解する必要がありますよね。賃料収入を安定的に得るためには、適切な家賃設定も当然ですが、入居率を維持すること、改善、設備メンテナンスが必要になります。

時代の変化に対応する力を。業界全体の意識改革が必要

-私たちの業界全体が考え方をシフトしていかなければなりませんね。

はい。不動産管理業は、一度管理契約が締結されると長期間契約が維持されますから業績は安定しやすい傾向にあると思います。また、先ほどからのお話にもありますがカスハラが多いから売買しかしたくない、という人も少なからずいると思うんですね。でも、クレームばかりがくるかと言えばクレームの数よりもお客様やオーナー様に喜ばれることの方が多いと思います。管理戸数が少ないと難しいと思いますが、共同でオーナー会をして良い商品があるということをオーナー様に教える場にしていくということも考えられると思います。それにはある程度県内の業者でルール作りは必要になるとは思います。

-全宅管理にはたくさんの仕組みや商品があります。フランチャイズと同じような商品を提供しているのに使い方を知らなかったり、管理戸数も少ないからいいや、といって勉強されないのはもったいないです。特に地方の方の業者さんと話をすると後継者がいないから自分の代で終わったらいいという方は結構いると思います。「管理」という面を通じて自分の子供でなくても次の代に承継できるようなものを協会として情報発信していくべきだと思います。

そうですね。将来的にはその地域に不動産業者は1件もない、という地域も出てくると思います。管理の方法はいろいろなパターンがあると思います。自社物件を管理していると他社がつけてきたら手数料は折半にする、というパターンもありますし、手数料は客付け業者が取るというパターンもあります。遠隔地でも営業チャンスになることもありますから情報交換を業者間でできる場所があるといいですね。

-愛媛宅建の会員数は微減ですが、今後会員同士がディスカッションしながら各地域の地域性も含めて管理の重要性を理解していただくことは良いことだと思います。横の繋がりを強固なものにしていくことで会員数の減少にも歯止めをかけられるのではないでしょうか。管理戸数300戸を目指してみませんか、ということで情報収集や仕組み作りを行っていきたいと思います。

物件の管理数が増えるほど管理会社の企業価値は高まりますからね。大手の管理業者は管理業務のノウハウが充実してはいますが、イレギュラーな対応に時間を要したり、担当者の入れ替わりが多いために関係構築が難しかったり、という面もあります。地域に密着した業者だからこそできることを協会としてもアナウンスしていければと思います。

-会長ご自身のことについてお伺いします。どういったきっかけで不動産業界に入られたので すか。

私は、異業種から不動産業に入ってきました。建設会社の広告作成がメインの会社にいました。当時上場を目指すということで建設会社の方が手伝いに来てくれないかという話があって不動産部門を任されたことがきっかけですね。当時は3店舗しかありませんでしたが、7年で21店舗まで西日本で広げていきました。これは自分だけの力でなく、全宅連の組織力に助けられました。高知県に出店して、そこから香川県を紹介してもらって、またそこから徳島県を紹介してもらって、という流れで九州まで展開することができました。社員は2~3名体制で管理業だけをやっていました。その後、独立して今の会社を立ち上げたのですが、宅建士の資格も独立してから取得しました。社名はワンズリアルネット株式会社と言いますが、社名にあるワンズに一人ひとりを大切にしようという思いを込めています。当初は売買、仲介をメインで考えていましたが安定収入を考えると管理業は外せません。住居用の賃貸マンションの管理もしますが、事務所が松山市内の中心部にありますので、二番町、三番町のオフィスビルの管理を中心に行っています。

-最後に、会員に向けてひとことお願いします。

安定した収入のためには必要最低限の管理戸数を増やすことが重要になってきます。管理戸数が増えると、毎月の管理料等の収入が増えますから、それでサービスを斡旋して手数料を得る機会も増えてきます。宅建協会、全宅管理では会員への各種研修や業界の最新情報の提供や研修、提言等によって会員業務をサポートしています。愛媛宅建、全宅管理愛媛県支部は、今後も会員の皆さまに寄りそう事業を行っていきたいと思います。引き続き協会活動にご協力をいただきますようお願いします。

-目の前の社員を大切にすることがお客様へ繋がるとの熱い思いをお伺いできました。会社が成長し続けるためには安定が重要ですから、社員が安定して働き続けられる環境を提供することが会社の成長に繋がり、次世代に承継されていく好循環を構築していくことで宅建協会、全宅管理会員の輪も広がっていくと思います。また、不動産業、賃貸管理業は時代の変化への対応力が求められます。我々の団体はそれに対応する組織力がありますから共に活動する仲間が少しずつでも増え続けると嬉しいですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。